2022.06.14
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長く健康的に暮らすために 注目度が高まる住まいの「室内の空気環境」

皆さんは住まい・暮らしにおける「空気の質」についてどれくらい関心をお持ちでしょうか。水や食事と比べると、強い関心をお持ちではないではないと思われます。この記事では、大きくヒートショック、シックハウス症候群との関連を中心に空気の質の重要性について解説します。

 

不可欠なものなのに注目されてこなかった空気の質

皆さんは、人間が体の中に最も多く取り込んでいるものとして何を思い浮かべるでしょうか。「水」や「食料」を思い浮かべると思いますが、答えは「空気」です。ある調査によると、1日に採り入れるのは空気が18kg、水が1.2kg、食料が1.3kgなのだそうです。
 

水や食料をしばらく体に入れなくても生きていけますが、空気はどんなに心肺機能を鍛えている人でも短い時間で命を失ってしまいます。こう考えると、空気の重要さを改めて実感できるのではないでしょうか。

では、空気に関する豆知識をもう1つご紹介します。人が住まいの中で過ごす時間は1日のうちどれくらいを占めると思いますか。答えは、平均で約6割(14時間)ほどになるといいます。
 

かつては「水と空気はタダ」が当たり前の認識だったが、今は大分状況が異なってきている。写真は一昔前のリビングの様子


仕事や学校などで忙しい日々を送っている皆さんにとって、1日に14時間も家にいるということに違和感を感じる方も多いでしょう。しかし、睡眠時間を平均8時間とすると、残りは6時間。そう考えると、変ではないと思えるかもしれません。
 

また、あくまで老若男女の平均と考えればこの数字もうなずけるものになるのではないでしょうか。いずれにせよ、ここまで読んでいただけると、住まいにおいて空気は皆さんにとっては大変重要な存在だということです。
 

ですから、これから住宅取得をする上で注目していただきたいのが「室内の空気質」です。では、どのようなポイントがあるのでしょうか。大きく以下の2つです。
 

  • ヒートショック対策
  • シックハウス症候群対策

長く安心して暮らすために対策を行いたいヒートショック

ヒートショックとは、室温の違いが体に悪影響を及ぼすこと。例えば、断熱性が低い住宅の場合、冬にはフトンの中とトイレでは30℃以上の温度差が生じる場合があります。脱衣所と浴槽の温度差も同様です。
 

かつての浴室の様子。居室から脱衣所、浴室へと移動する中で寒さを感じたという記憶がある人も多いだろう


このような急激な温度変化が、特に高齢者の身体に影響し、心不全や脳梗塞といった疾患を引き起こすことが近年、よく指摘されるようになりました。というのも、これらの疾患による死亡事故は、交通事故によるそれよりも圧倒的に多くなっているからです。
要は、安心安全であるべき住まいが危険な場所になっているわけです。これらの疾患をできるだけ回避するためには、上下階を含めた住まい全体をほぼ同じ快適な温度にすることができる住宅が求められます。
 

近年、国は皆さんが住宅取得をする際、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を推奨していますが、これは単に省エネという観点からだけでなく、健康に暮らせるという側面からも推奨しているものなのです。
 

住宅の省エネに大きく影響するものの1つ、壁の断熱材


住宅取得を目指す皆さんの多くは、まだ身体的な衰えを感じていないと思われます。しかし、それはいずれ誰にでも訪れること。将来、住まいが危険な存在にならないよう、取得時から何らかの備えをしておきましょう。
 

以上は、室温を室外に逃がしにくくする断熱・気密性能に関連するのですが、これはもう1つのポイントであるシックハウス症候群対策にも関連します。というのも、気密・断熱性能が高まると結露が発生し、それが身体にダメージを与えることがあるからです。
 

人の身体、建物の耐久性に悪影響を及ぼす結露、湿気

結露は建物には好ましくない湿気を生み出します。ダニなどが暮らしやすい環境を作り、皮膚や呼吸器に関連する疾患の要因になると言われています。なお、柱などの構造体を腐食させるため、建物の耐久性を低くする原因にもなります。
 

窓に付着した結露の様子。これは建物や人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある


問題は断熱性・気密性が高い住宅ほどそれらのリスクが高まること。結露は家族の体温や呼吸、炊事、お風呂のお湯、洗濯物などから発生する水蒸気から形成されますが、水蒸気をうまく屋外に排出する仕組みが住まいに用意されていることが求められます。
 

近年の新築住宅には換気システムの設置が義務化されていますが、それがあっても間取りなどにより湿気が籠もってしまう住まいがあります。ですので、住宅取得をする際にはその点もしっかりと検討したいものです。
 

結露は住宅の構造材を劣化させる原因にもなる

ホルムアルデヒドなど化学物質での健康被害も

シックハウス症候群については、花粉やPM2.5に加え、ホルムアルデヒドなどの化学物質の問題もあります。これも、換気システムがしっかりと機能していれば大きな健康へのダメージは少なくなります。
 

しかし、敏感な人にはたとえ少量でも健康を悪化させるケースがあることから、国が設けた含有基準を下回る化学物質しか含まない建材を用意しているハウスメーカーもあります。症状を持つ方は検討してみると良いでしょう。

いずれにせよ、温熱環境に加え、化学物質対策も含めた健康増進の狙いもあり、24時間全館空調・換気システムを推奨しているハウスメーカーが近年、大変増えており、差別化ポイントの1つになっています。
 

ちなみに、ハウスメーカーなど建築関係者だけでなく、医療関係者の中からも、温熱環境を中心に住まい中の空気の質を一定に保つことができる24時間全館空調システムの導入について、エビデンス(科学的根拠)を示しながら、有用性を指摘する事例も増えています。
 

新型コロナウイルスの感染拡大と、それにより自宅で過ごす時間が増えたことで、感染症対策についての関心が高まっています。しかし、感染症は一時的なこと。住宅取得にあたっては、より長く安心して快適に暮らせる観点から、より本質的な室内空気質についてしっかりと検討していただければと考えます。

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