2022.06.10
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住まいの「お金」の話 「イニシャル」「ランニング」「ライフサイクル」コストについて

住まいの取得にあたっては「イニシャルコスト」だけでなく、「ランニングコスト」「ライフサイクルコスト」にも注目すべきです。この記事では、それぞれについて紹介するとともに、なぜ注目すべきなのかについても解説します。

 

同じイニシャルコストでも満足度などが異なる

住まいにまつわるお金の話には様々なものがあります。代表的なのは、住まいを取得する際の費用で、ローン金利なども含め注目する人がとても多いようです。ちなみに、住宅取得費用については「イニシャルコスト」と呼ばれることがあります。

 

低価格住宅のイメージ。イニシャルコストだけを重視して住まいの検討を行うことは将来のことを考えるとお勧めできない

 

ただ、注目すべき費用は、イニシャルコスト以外にも存在します。「ランニングコスト」と「ライフサイクルコスト」です。そこで、それぞれの関係性なども含めた、住まいに関するお金の話を少し詳しく紹介します。

 

まず、イニシャルコストについて。同じイニシャルコストであっても、住まいに関する満足度は大きく変わってきます。例えば、敷地の問題。同じイニシャルコストで、地盤がしっかりしていて水害などのリスクが少ない場所に建てるのと、そうでない場所で住まいづくりをするとしましょう。

 

東日本大震災で敷地が不同沈下した様子

 

当然ながら、万が一の際の安心・安全の度合いは前者の方が高いわけです。つまり、どこで暮らすかによって同じコストでも価値が異なる可能性があるわけです。同じイニシャルコストで同じような条件の敷地であっても、耐震性が高い建物とそうでない建物を建てた場合には、これもまた安心・安全の度合いは異なります。

 

光熱費に大きな違いが出る可能性を考慮すべき

次に、ランニングコストについて。断熱性能が高く、太陽光発電などを設置した省エネに優れた建物と、そうではない建物では、年間の光熱費は当然ながら前者の方が少なく済みます。どちらにも60年間住み続けるとすると、前者と後者の光熱費の差はトータルで数百万円になると考えられます。

 

太陽光発電の設置は停電時に電力を確保できるというメリットもある

 

これからの時代は脱炭素が大きな流れになります。その中で国のエネルギー政策は大きな転換点を迎えています。もしかすると、後者のような住まいに住む人たちには、光熱費にプラスして「炭素税」といった新たな負担が生じる可能性が出てくるかもしれません。

 

このことは想像の話ではなく、国が今後のエネルギー政策を見据え議論していること。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及や、太陽光発電の義務化について議論されているのと同様のイメージです。

 

メンテナンスコストを明示するハウスメーカーも

ライフサイクルコストについては、建築時から解体時までにかかる全てのコストを合わせたものです。具体的には、イニシャルコスト+ランニングコスト+α=ライフサイクルコストというイメージです。「α」の代表的なものとして「メンテナンスコスト」があります。

 

建物が60年で解体されるとすると、それまでに数百万円の費用がかかると推計されます。「数百万円」と表記したのは建物に使われる素材・部材の耐久年数、リフォームなどのコストに幅があるためです。

 

新築時に高耐久素材・部材を使っており、可変性(間取りの変更などが容易なこと)が高い建物であれば、メンテナンスコストは比較的少なく済みます。しかし、そうでなければコストはアップするわけです。

 

なお、近年は外壁を中心とした外装材について高耐久の素材、塗装材を用いるケースもあり、この場合、メンテナンス費用の中でも高額な外装リフォームの回数や費用を低減できるようになっています。

 

メンテナンスコストに関して有利な外装材の1つがタイル外壁

 

また、大手ハウスメーカーの中には、新築時に50~60年後を見据えたメンテナンスプログラムに基づく、おおよそのコストを提示する企業があります。

 

上記のような配慮が行われていないイニシャルコストが低い住宅と、配慮が行われてイニシャルコストが高い住宅を比べた際、新築から60年が経過したライフサイクルコストでは、前者の方がトータルでコストがかかっていることも十分にありうるわけです。

 

今後はより重要度が増す「資産価値」

もう一つの「α」が資産価値です。一般的な戸建て住宅の建物部分は築後20年で価値がゼロになるとされています。しかし、しっかりとした点検とメンテナンスなどを行っていれば、20年後はもちろん、60年後にもゼロにならない可能性があります。

 

近年、長期保証をアピールする住宅事業者が増えているが、それを実現するためにどのような取り組みをしているのかチェックしよう

 

何らかの理由で住まいを手放すことになった際、建物にある一定の価値があることは、皆さんのその後の暮らしを有利にするはずです。というのも、建物の価値が低いと、土地を手放す時に建物が邪魔をして売却がうまくいかず、解体費用を出して売却しなければならなくなるケースもあるからです。

 

そうなると、売却することはかえって不利になってしまいます。近年、空き家問題が注目されていますが、空き家が増えているのは以上のような理由から、建物が放置されてしまっていることが一因なのです。

 

住まい分野の重大要素となりつつある「持続可能性」

ところで、ランニングコストの箇所では脱炭素化に関するお話を紹介しましたが、ライフサイクルコストについては「持続可能性」の流れが関連してきます。具体的には、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)です。

 

SDGsに基づき世界全体が動いており、それは日本の産業も同様で、住まいの分野も例外ではありません。そして、住まいの分野で取り組むべきことの1つとして、建てた住宅をできるだけ長く住み続けられるようにするということがあります。

 

長く住み続けるというのは、例えば皆さんが建てた、あるいは購入した住宅を何らかの理由で手放しても、新たな購入者が現れて住み継がれる、つまり持続的に存在し続けるということです。

 

将来、何らかの理由で住まいを売却しなければならなくなった場合のことも考慮すべきだ

 

また、新築に比べ、リフォームやリノベーションを行うことの方が、資源を消費せずにすみ、地球環境が持続可能なものになります。こうしたこともライフサイクルコストを構成する「α」に相当します。

 

話をコストに戻すと、例えば「長期優良住宅」のような建物の場合、しっかりと施工され点検・メンテナンスが行われていれば、60年、もしかしたら100年近く残すことができます。100年の耐久性があれば持続可能性があるものと言えるのではないでしょうか。

 

メンテナンスコストも資産価値も、住まいの持続可能性を高めるものとして、今後、さらに注目度が高まると考えられますし、信頼度の高い住宅事業者とそうでない事業者ではこれらを含めたライフサイクルコストへの配慮が大きく異なっています。

 

皆さんが住まいづくりを検討する中で、事業者に上記のような内容について確認し、依頼先を決定する要素としていただければと考えます。

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