2022.06.06
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「レジリエンス」住宅が在宅避難と早期の生活復旧を可能にする

大地震、台風、豪雨災害…。我が国は災害大国と言われ、どこに住んでいても災害リスクと無縁ではいられません。しかも、地球温暖化などの影響から災害リスクは一層高まっていると見られています。そこで注目されるのが「レジリエンス」住宅。この記事ではその内容について最新の取り組みを含めご紹介します。
 

レジリエンスとは

「レジリエンス(resilience)」という言葉は、「復元力、回復力、弾力」などと訳されるものです。住まいの関連では、「レジリエンス住宅」=「災害時でも普段通りに近い暮らしができる住宅」といった意味合いで使われています。
 

具体的には、以下のような特徴があります。

  • 耐震性が高く全壊・半壊しない
  • 複数回の大地震に耐えられる
  • 水害や土砂災害、津波などの各種リスクが少ないエリアに建てられている
  • エネルギーを確保する手段を持つ
  • 飲み水や食料を保存するための仕掛けがある
東日本大震災当時、計画停電が広い地域で行われた


では、なぜレジリエンス性の高さが注目されているのでしょうか。それは、東日本大震災を超える超巨大災害の発生、地球温暖化による豪雨災害・台風被害などの頻発が懸念されているためです。
 

仮にそうなれば多くの人たちが住まいを失い、避難所での生活を余儀なくされる可能性があります。その際の暮らしは精神的、肉体的に過酷なものとなりがちで、特に幼い子どもや高齢者がいる人にとってはなおさらです。
 

東日本大震災の津波被害を受けた住宅


ただ、レジリエンス住宅にお住まいの人なら、避難所生活の苦労を軽減できる可能性が高まります。また、電気やガス、水道などのライフラインが止まっても、ある程度の電力などを確保でき、平常時に近い暮らしを維持することもできます。
 

東日本大震災当時を思い出していただけると分かると思われますが、災害の被害規模や範囲が広がればひろがるほど、「公助」(公的な支援)を受けられるまでの期間が長期化、さらにライフラインの復旧に時間がかかるものです。
 

近年は竜巻被害も頻発するようになった


レジリエンス住宅は、自らを守る「自助」の暮らしができるもの。その数が増えれば増えるほど、社会の復旧・復興がスムーズに行えます。つまり、家族の安心・安全だけでなく、社会への貢献度が高い住まいとも言えます。
 

ハザードマップで災害リスクをチェック

ここからはレジリエンス住宅についてさらに深掘りしてみます。まず地震対策ですが、その内容は別の記事「住まいの地震対策 耐震・制震・免震について」で紹介しています。ですので、ここではそれを補足する火事対策についてご紹介しておきます。
 

大規模地震災害の1つに1995年に発生した阪神・淡路大震災があり、この際に亡くなった方の死亡原因を見ると火災が最多となっています。つまり、建物の倒壊以上に火災の発生と延焼の方が被害を拡大する要因となったわけです。
 

木造住宅が密集エリアのイメージ。道路が狭いため、火災になれば避難が難しくなることも


ここでは法規制などについては割愛しますが、新築住宅では耐火性の高い素材の使用や、延焼しにくい構造とすることなどが義務づけられています。ただ、法規制を遵守した住宅を取得しても、その周辺に古い住宅が建ち並び、かつ住宅密集地域であれば火災のリスクは高まります。
 

ちなみに、最近注目されている火災対策の1つに「感震ブレーカー」の設置があります。地震などによる停電が解消された際、倒れた電気ストーブなどが作動して火災が発生するのを防ぐ器具です。ブレーカーに設置するもので、既存住宅でも設置できます。
 

さて、火災対策だけでなく、住まいのレジリエンス性を高めるためには、それぞれのエリアにおける災害リスクを把握することが大切です。その際に有用なものが、各自治体などが発表している「ハザードマップ」です。
 

例えば、2020年8月28日に施行された「宅地建物取引業法」の施行規則の一部改正により、不動産会社は不動産の売買にあたって、水害に関するハザードマップを用い説明すること(重要事項説明)が義務づけられました。
 

このことが示すのは、水害に限らず、住宅を取得する際に、その予定地の災害リスクを十分に理解しておくことの重要性です。あえて言うなら、災害リスクは予測できる時代になっており、上記はその象徴なのです。
例えば、太陽光発電、家庭用蓄電池などエネルギーを確保するためのハードを導入していても、建物が流出したり倒壊してしまえば無用の長物、元も子もない状態になってしまうものです。
 

まずは、災害リスクの低いエリア、例えば水害のリスクが低い高台、地震による地盤の問題が少ない場所に住む、あるいはそうしたリスクに対応する備え(地盤補強など)を行うことがレジリエンス性を高めることのキーポイントです。
 

エネルギー確保に役立つ太陽光発電、蓄電池

ところで、エネルギーの確保については、定番となっているのが太陽光発電システムの設置です。ただ、どんなに大容量のシステムを設置していても、停電時には通常1500wの電気しか利用できません。
 

太陽光発電と電気自動車の間で電気をやりとりできる「V2H」のイメージ


しかも、専用コンセントのみでしか使えませんから、家電製品のほんの一部や、スマートフォンなどの充電といった限定的な活用しかできません。ただ、利用の幅を広げられるものも登場しており、ここでは代表的な2つをご紹介します。
 

蓄電池

1つは蓄電池。太陽光発電による電気を貯めることができ、比較的大容量のものも登場しています。通常時は電力会社の電力と太陽光発電の両方から電気を貯め、停電時には太陽光発電のみに、自動的に電源を切り替えるシステムを有するものもあります。
 

家庭用蓄電池(エネファーム)

もう一つは、家庭用蓄電池(エネファーム)。ガスで湯沸かしと発電を行うもので、停電時にも発電ができ、お風呂などのお湯が確保できます。とは言え、基本的に停電時専用コンセントからのみ電気を利用できるものです。
 

これらは高額ですので、設置には国による補助金制度が設けられているほか、電力会社やガス会社が太陽光発電、エネファームの導入を条件に、蓄電池を無料で設置できるようにするサービスも一部で始まっています(太陽光発電の余剰電力は各社に売電などが条件)。
 

この他、ハウスメーカーの中には、「V2H」(Vehicle to Home)という、電気自動車などと住宅の間で電力をやりとりできるシステムの導入などで、停電時に通常生活に近い電力を使える暮らしを可能にしているケースもあります。
 

飲み水・食料確保のための新たな仕組みも登場

最後に、レジリエンス性を高めるための最新の情報を紹介しておきます。まずは、大規模災害でたびたび発生する断水時の飲み水の確保に対応する貯水タンク。家族数日分の水を貯められる大容量タイプが登場しています。
 

貯水システムの設置イメージ


屋外や床下に設置するタイプがあり、通常時は水道管→貯水タンク→キッチンへと水道水が供給され、断水時でも新鮮な飲み水が貯まっているという仕組み。災害時用の水を大量に確保するのは収納スペースの面で難しいケースがありますが、これなら容易に確保ができます。
 

もう1つは食料の確保。「ローリングストック」という手法が推奨されています。これは普段から少し多めに食材などを購入し、使ったら使った分を買い足し、常に一定量の食料を備蓄するという方法です。
 

大容量のパントリーがあればローリングストックがしやすくなる


最近の非常食は味などがずいぶん改善されていますが、それでも口に合わないものもあります。特に幼い子どもや高齢者などにはハードルが高いかもしれません。この手法ですと、普段口にしているものですから、比較的安心ではないでしょうか。
 

以上、ざっくりとレジリエンス住宅のあり方について紹介しましたが、国ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及にあたって、レジリエンス性を高めた「次世代ZEH+」として補助金も用意しています。

補助金は1戸あたり125万円(令和3年度予定)。ZEHは元々、断熱性が高く快適な暮らしができます。それに加えて、レジリエンス性が高いため、災害時であっても一般的な住宅に比べ、より快適な暮らしを維持できます。
 

このように、住まいのレジリエンスについてはさまざまな選択肢が用意されています。予算の都合もあるでしょうから、住宅取得の検討の中で皆さんのできる範囲でのレジリエンスの追求をしてみてください。

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