2022.06.03
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【住まいの地震対策】耐震・制震・免震の違いを知っておこう

南海トラフ地震や首都圏直下型地震など、大規模な被害を招く大地震の発生が近い将来、発生することが懸念されています。そこで必要となるのが住宅における対策ですが、「耐震」「制震」「免震」という3つのスタイルがあります。この記事では、それぞれについて解説します。
 

どこに住んでいてもついて回る地震リスク

十勝沖地震(2003年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、北海道胆振東部地震(2018年)。これらは、21世紀以降に我が国で発生し大きな被害を与えた大地震であり、数年に1度発生していることが分かります。
 

もちろん、これ以外にも数多く局地的に大きな被害をもたらした地震があり、それは全国的に広がっています。つまり、私たちは、日本のどこに住んでいるとしても地震の被害から決して無縁ではいられないのです。
 

熊本地震では、強い揺れが連続して発生したことから、築年数が浅い住宅でも倒壊していた


そして、今後は南海トラフ地震や首都圏直下型地震といった、さらに大規模な被害が予想される巨大地震の発生が懸念されています。これらについては、長期間にわたり公的な支援が期待できない可能性もあります。
 

では、私たちにどのような対策ができるかというと、地震の被害を最小限にできる住まいに暮らすという備えをしておくことだと考えられます。その中心となるのが、少なくとも倒壊せず、できれば継続して居住できる建物に住んでおくことです。
 

さて、これまでの大規模な地震災害を受け、我が国における住宅の地震対策は、ソフト・ハードを含め世界的に見ても最高クラスのレベルにまで高まってきました。このうち、今回はハード面についてご紹介します。

具体的には、「耐震」「制震」「免震」というスタイルがあります。ちなみに、これらが公共の建物やビル、マンションなどの集合住宅だけでなく、個人の住宅にまで広く導入されている国は世界的にはほぼないと見られます。
 

基本であり義務づけられている「耐震」

最初に耐震ですが、これは地震対策の基本。文字通り地震の揺れに耐えることを目的としたものです。制震、免震とは異なり、以下のような強度が義務づけられていることが最大の特徴です。

現在は、震度5程度の地震の揺れがあった場合には、建物を形づくる構造躯体に損傷が生じず、震度6強~7程度の揺れがあった場合にも、倒壊・崩壊しない程度の耐震強度が義務付けられています。
 

耐震金物が取り付けられている様子


これは、1981年(昭和56年)に改正された建築基準法で定められた新耐震基準によるもの。その後、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災発生に伴い、建築基準法は2000年(平成12年)に改正され、基礎や構造部材の接合強化、耐力壁の適正配置などが定められました。
 

基礎については地盤調査が必須になり、構造部材強化については、家が倒壊する原因となる、柱の足元や頭の部分が基礎や梁から抜ける現象を防止するための金物の種類などが具体的に示されました。

また、耐震性を高めるためには建物に「耐力壁」と呼ばれる壁を設けることが有効ですが、法改正により計算上、適切な量とバランスよく配置することが求められるようになりました。
 

要するに、耐震とは建物が大きなダメージを受け倒壊することがないよう、補強を行うというもの。あくまで1度の大地震に耐えることが目的となっており、数度の大地震の揺れに耐える中で補強部分が弱くなり、耐震強度が低下することも懸念されるわけです。
 

その懸念に対応するものが制震と免震で、これらは耐震(構造)というベースがあって成り立つものです。以下では、より分かりやすくなると思われるため、先に免震の方から説明します。
 

地震の揺れの影響を減らす「免震」

免震とは、建物に及ぶ地震の揺れを減らす技術です。具体的には、基礎と構造躯体の間に装置を設置し、大きな揺れが発生した際、その装置が作動して、構造躯体、さらには建物内の人やモノを守るという仕掛けです。
 

免震支承による免震システムのイメージ


戸建て住宅向けの装置は滑り支承、ダンパー(オイル、鋼材)を活用したものが主流です。モノによって性能は異なりますが、大きな地震があっても「全く気付かなかった」というユーザーがいるほどの効果が期待できるケースもあります。

揺れが建物へ伝わる力を減らせるわけですから、構造躯体のダメージは当然少なくなり、仮に何度、大きな地震が起こっても建物の耐震性が低下する可能性を低くすることができます。
 

地震対策の決定版的な位置づけに見られている免震ですが、設置コストが高額(数百万円)になること、建物の形状や地盤の状況によっては設置効果が少ないといったデメリットがあり、普及のネックになっています。
 

揺れによる建物のダメージを軽減する「制震」

そこで近年、ハウスメーカーなどで盛んに導入されているのが制震。これは、地震の揺れのエネルギーによる構造躯体のダメージを減らす仕組みで、複数回の大地震や余震による建物の倒壊を防ぐことが期待できます。
 

ミサワホームが開発・採用している制震装置


筋交い(鉄骨住宅ならブレース)部分や耐力壁の一部に高減衰ゴムやダンパー、変形する特殊な金物を用いるものなどがあります。変な言い方ですが、最悪、装置が壊れたとしても交換して、その後の地震に対応するというイメージです。
 

また、地震自体は建物に伝わりますから、建物自体のダメージを減らせても、中にいる人は相当の強い揺れを感じるものだと認識しておくと良いでしょう。設置費用は1棟あたり数十万円、建物の形状もあまり影響しないなどという特徴もあります。
 

以上は、あくまで建物、構造躯体に関する地震対策であり、内部の設備や建具についても対策を行うことで、モノの転倒や飛散によるケガなどを防ぐことができ、安全・安心を高めることができます。

例えばキッチン回り。お皿などが落下すると割れて、ケガをしたり避難の妨げとなります。そこで収納棚の扉に「耐震ラッチ」と呼ばれる開放防止の器具があるものを設置すると、飛び出しが防止でき安心です。
 

ちなみに、耐震ラッチそのものは市販されていますので、今お持ちの棚などに自分で取り付けることも可能です。ただ、強く棚が固定されていないと転倒する恐れがあります。ですので、新築時に棚を含めた家具を造り付けにしておくことがより効果的です。
 

このあたりのことは地震対策のソフト部分であり、住宅事業者は独自の様々なノウハウ、知見を有しています。構造部分のハードだけでなく、それらを含めたトータルな地震対策を依頼先選びの指標とすると良いでしょう。

 

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