「土地探し」体験談。住宅営業40年の父からもらったアドバイスとは
家づくり初心者にとって、まずハードルが高いのが「土地探し」だと思います。
私たちも経験したのですが、初心者の私たちにはまず土地の「良し悪し」を判断するものさしがなく、普段使わない大きな金額のため適性価格かどうかも分からない。そんな土地探しで役に立ったのは、やはり専門知識を持った人のアドバイスでした。
実は、私の父はハウスメーカー勤務歴約40年(孫と沖縄をこよなく愛するアラセブン)。土地探し中にもらったアドバイスで印象に残ったことをいくつか紹介してみます。
用途地域を理解せよ
「用途地域」は、まず理解しておくべき土地の基礎知識のひとつで、「その土地をどんな用途で使うか」を定めたもの。住居専用の地域なのか、商業地域なのか、工業地域なのか、13の区切りに分かれており、それぞれでどんな建物が建てられるのか、細かい決まりがあります。
右も左も分からず家探しを始めた我が家で、ごく初期に候補だったのが「準工業地域」の物件。何気なく父に物件情報を見せると、思い切り難色を示されてしまいました。
父「準工か……(眉間にシワ)」
私「周りも新しいお家がたくさんあるところで、スーパーも近いし、子どもの学区も変わらんよ」
父「まあ、おまえ達が決めることやけどな……でも、準工か……(眉間にシワ)」
私「気になるならちゃんと言ってや!」
……というくだりを経て、漠然と「用途地域というのはなんだか重要らしい」と気づいたのが初期のこと。
私たちも一応、土地探しをするにあたって、基礎知識として押さえてはいました。ただ、実際に検討していた物件の周辺は、普通に一戸建てやマンションが建ち並び、大型スーパーもある利便性の高いエリア。工場らしい工場が建ち並んでいるわけでもなく、十分に住みやすそうな「現在の環境」が目の前にあると、「準工業地域」と言われてもピンと来ず、なかなかシビアに捉えることができませんでした。
指摘されてみて改めて意識したのが、その地域が今どうであっても「将来にどうなるか」は分からないということ。そして、将来における見通しを持つために見るべきなのが用途地域なのだということです。
そう考えて見てみると、今はちらほらと小さな町工場がある程度ですが、将来どうなるかは分からない。また、現在でも一般的な住宅地と比べると大きなトラックの通行が多いことなど、改めて把握できた特徴もありました。
準工業地域が悪いというわけではありませんし、実際に住みやすい住宅街になっている場所は多くあります。ただ、やはり用途地域は理解しておくべき。それによって将来にわたって周辺環境がどこまで保証されるのか、予想がつくからです。
建ぺい率や容積率は押さえるべき
土地の基本的な情報として、建ぺい率(※1)・容積率(※2)・高さ制限なども見ておく必要があります。それによって、実際建てられる建物がどんな大きさなのか、変わってくるからです。
準工業地域の土地をいったん見送ったあと、次に候補となったのはすぐ近くのエリアで、今度は第一種低層住居専用地域。建ぺい率50%、容積率80%という土地でした。決して広くはない土地で、容積率80%というのはどうなのか……?と私は思ったのですが、これには父は「いいと思う」と。
私「容積率80%やと90平米くらいのおうちしかできんけど……」
父「土地の半分が空き地になるし、ゆったり余裕のある住宅街になりやすい。広ささえOKなら雰囲気はいいはず」
……という意見でした。
建ぺい率や容積率を見て「建てられる家のサイズ」を掴むのは基本かと思いますが、それに加えて街並みの雰囲気も変わってくるので、あわせて押さえておくとイメージしやすいと思います。
実際にいくつかのエリアを自転車で巡ってみたのですが、容積率80%なら比較的ゆったりした住宅地、200%の地域では、ぎゅっと無駄がない住宅地という印象を受けました。このあたりは好みと条件次第ですが、地方出身の私には、建ぺい率50%、容積率80%の住宅街は空が広く見え、魅力的に映ったことを覚えています。
※1 建ぺい率…土地の面積に対する建築面積の割合
※2 容積率…土地面積に対する延べ床面積(全フロアの合計面積)の割合
【関連記事】希望どおりの土地を選ぶためのチェックポイント 〜用途地域・建ぺい率・高さ制限 etc.〜
迷ったらプランを入れてもらえ
候補がいくつか絞れてきた段階でアドバイスされたのが、「迷ってるなら一回プラン入れてもらったら?」でした。
土地の購入を決定していなかったとしても、候補のハウスメーカーに頼んで建物プランを出してもらうことは可能です(物件情報にも、参考プランなど載っている場合もありますね)。私たち家づくり初心者にとっては、結局それが一番「そこに建てられる建物」をイメージできる方法でした。
実際に、出されたプランからその土地の特徴が分かったこともあります。候補となった土地は北側がメイン道路の、北西角地。漠然と「北側がメイン道路だから、北側に駐車場と玄関だろう」と考えていたところ、あるハウスメーカーさんは西側に玄関を取り、西道路から土地の南側に車を入れる駐車場を提案してくれたんです。
そうすることで建物を北側に寄せられるため、南側隣家との距離が開き、日照が少し期待できることに。北西角地のメリットを実感できたプランでした。
父「その土地に建てられる建物がどんなものかを知り、実際に暮らすイメージが持てるかどうかが大事。土地と建物、トータルで考えるべき」
だそうです。
また、出されたプランでその土地の欠点が分かることも。たとえば2Fリビングを最初から提案される場合は、1Fの日当たりは悪いなどなんらかの理由があるだろうと想像がつく、などです。
土地の欠点を受け入れるか否かは自分たち次第
私たちの土地探しでは、候補をある程度絞ってから、実際に購入を決定するまでに長い時間がかかりました。候補はいくつかあったものの、「ここなら」と思った土地はすぐ売れてしまい、また別の土地は一級河川が近い立地でハザードマップの浸水リスクが気になったり、利便性の面が気になったり……。
「土地に100点はない、60~70点なら買い」。これは土地探し初期に聞いた言葉。というよりは、どこのハウスメーカー営業さんも不動産屋さんも、皆さん同じ言葉を言っていました。けれども、私たち初心者の感覚でいえば、「60点って低くない!?」が本音。父に聞いてみると、「ああ、せやな。まあ営業トークやけどな」と。笑
でも「70点でOK、実際はそんなもんや」とも。
当たり前のことですが、欠点のない土地は誰もが欲しい。なかなか見つからないか、見つかっても高値であるか、どちらかです。
父「欠点を把握することは必要やけど、それを受け入れるか避けるかは自分次第。どの欠点なら妥協できるかっていうのも大事やで」
父の経験では、実際に川の近くで育った人はハザードマップをあまり気にしない、坂が多い町で育った人は擁壁の存在を気にしない、などが傾向としてあるそう。
いずれにせよ、欠点=ダメ!ではなく、欠点についても正しく知り、自分たちがどう判断するか、が土地探しでは大切なようです。
土地だって値引き交渉は可能
紆余曲折があった土地探しで、私たちは最終的に「70点くらいかな」と思える土地で決定しました。
その土地は「条件に合う」ということで見たものの、ハザードマップから見る浸水リスクや、利便性などの欠点が気になって決め切れなかったところ。いくつか気になる点もある上に、そもそも予算をちょっとオーバーしていたことが大きなネック。予算オーバーしてまで欲しいとは思えなかったのです。
そして、新しい物件が出てこないかを待ちつつ、自分たちでも不動産屋めぐりをして気長に探そうか、と思っていたところ、ふと思い出したのが、父がぽろっと言った以下の言葉。
父「これ、公開から日が経ってるし、指値(さしね)できるんちゃうか」
指値とは、希望金額を指定して申し込みをすること。ごく簡単にいえば値引き交渉のようなものなのですが、「いくらになりますか~?」といったライトなものではなく、希望金額を明示し、指値が通ったならばそのまま購入を決定する必要があります。
土地に対して値引き交渉をするイメージがなかったのですが、そう考えてみると、土地自体には気になる点はあるものの、決定的な難があるわけではない。そして、出してもらった建物プランは気に入っていました。
そこで、不動産屋さんに相談し、売主さん側の状況など聞いてもらって、200万円減額した指値を入れ、それが通って最終的に購入に至ることとなりました。気になる点については、浸水リスクや利便性といった欠点は受け入れる。そして、「予算面」のネックは指値で解消し、私たちの中で「70点以上」となったので購入を決めた、というところです。
土地探しを終えて
土地探しを終えて実感したのは、やはり土地を決めるためのものさしを持つには「知識」を身につけるのが近道だということ。我が家は父という存在があってたまたまラッキーでしたが、基本的な知識を押さえるために本を読んだりWEBで情報収集したり、複数の不動産屋さんやハウスメーカーさんに意見を聞くなど、専門家とコミュニケーションを取りながら確認していくことが必須だと感じました。
土地の個性は本当に千差万別。正しくその土地の長所・欠点を知った上で、自分なりのものさしで判断することが大切なんだと思います。