2021.11.19
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建築家に聞く 間取りのプランニングで知っておきたいこと

注文住宅
ノウハウ

広くて日当たりのいいリビングで過ごしたい。でも、寝室も日当たりがよくて、どうせなら風通しもいいといいなぁと、間取りのプランニングを考え出すと、あれもこれも、譲れなくなってしまいます。そんな時、「団らん」から家の間取りを考える!? 引き算の法則!? 驚きのプランニング術を、建築家・佐川旭さんに聞きました。

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必然的に面積が決まるスペースから考える

——最近は、LDKと分けずに、とにかく広いリビングにすることが主流だったりしますよね。

佐川:そうそう、LDKというのは、公団(日本住宅公団)が公団住宅を建てる時につくった記号にすぎません。今は家族の形も働き方も大きく変わりましたよね。だからLDKなんて考えずに、フリースペースのようにしたり、食事にしても常にテーブルでするんじゃなくて、たまにはデッキでしてみようとか、生活シーンをいくつかつくることができる間取りの自由度があると思います。

——そこで、リビングはどのくらいの広さにすればいいのかとか、子ども部屋を含めて個室はいくつ必要とか、ワークスペースの確保など、間取りのプランを考える時のヒントを教えていただきたいです。

佐川:それには、まずは、家の中での1人あたりの面積を考えることです。大まかな目安は、1人あたり20平米なんですよ。

——お~、そうなんですね。

佐川:そうすると、例えば4人家族なら、80平米ということになりますよね。これがだいたい3LDKのマンションを建てるときの目安になっている。戸建ての場合だと、階段や玄関などの取り方が変わってくるので、もう少し広くなりますね。

——ええ。でも全体の広さのイメージができました!

佐川:というわけで、一番コンパクトに戸建てを考えてみると、16坪ほど(=約53平米)がワンフロア。1階と2階を合わせて32坪くらいになります。これを一つの目安で考えるとわかりやすいとよく言うんですけども。そのなかでリビングとダイニングを考えると、10~15畳ほどになるでしょう。

——キッチンは別と考えて、ですよね。

佐川:はい、別です。標準的なキッチンは4.5畳と言われています。それから、家が大きくても小さくても、最低限の面積が決まってくるスペースというのがあります。例えば、玄関はだいたい畳2枚(=1坪)です。階段も同じく2畳。トイレは1畳、洗面脱衣室は2畳。そして、お風呂も2畳ですね。

——確かに、友人の家に遊びに行っても、どこも同じくらいのスペースだと思います。

佐川:そうでしょう。家が小さかったとしても、お風呂は1畳とか半畳にすることはできないんですよ。トイレも半畳にすることはできません。だから水回りを押さえてしまえば、あとはどこで調整するかというと、リビング、ダイニング、キッチンになってくる。

——すごく明快です!

佐川:一番最初にリビングを何畳と考える前に、敷地で建てられる面積がわかったら、階段、トイレ、お風呂というのはだいたい何畳と出すことができる。すると必然的にリビングにどれくらい取れるかがわかってくるというわけですね。

佐川旭(さがわ・あきら)/1951年福島県生まれ。一級建築士。株式会社佐川旭建築研究所代表。日本大学工学部建築学科卒業。主な著書に『住まいの思考図鑑』や、台湾、韓国、中国でも出版されたベストセラー『最高の住まいをつくる「間取り」の教科書』、監修に『リフォーム業務が一番わかる』、『はじめてのマイホーム』など多数。一般住宅、公共施設のほか、岡山県新庄村や福島県飯舘村の村づくりアドバイザーを務めるなど、まちづくりのプロジェクトでも活躍する。

 

間取りは「団らん」を中心に考えよう

——では、間取りということなると、まずどこから考えればいいのでしょうか。

佐川:土地の中で、「一番いい場所」はどこか探すことです。

——一番いい場所。その条件とは?

佐川:日当たり、風通し、視線ですね。少し話が逸れますが、家のトラブルというのは、目に見えないもので起きるんですよ。土の中。そして光、風、臭い、音です。こういった要素はすべて見えないから、トラブルになるんです。でもこの見えないものを解決してあげることが、大事なんです。

——なるほど。

佐川:例えば、周りに建物があって、あまり日当たりは良くない土地だけれど2メートルだけ隣の家との間が空いているとすると、その方向から光が入ってきて、そこは借景にもなるので、そこをリビングとダイニングにできないかな、と。そのように、まずその敷地の中で一番居心地の良さそうな場所を考えるんです。

——そうすると、キッチンの場所もその周りにあると考えることができますね。

佐川:そうですね。とても極端に言ってしまえば、トイレは近くの公園の公共便所を利用すればいいし、お風呂も銭湯や健康ランドがあるものです。そうやって、家に必要だと考えられる要素を一度、全部外に出してみるんです。

——へぇ、いつも足すことばかり考えていました……。

佐川:意外に思うかもしれませんが、間取りのプランニングというのは引き算で考えていくとうまくいくもの。そうやって引いていった時に、どうしてもアウトソーシングできないのが、「団らん」なんですよ。そもそもどうして家をつくるのかというのも、そこにヒントがある。

——団らんですか。家族と過ごす時間ですね。

佐川:それはファミリーレストランでだってできるんじゃない?と言うかもしれないけれど、それでは落ち着きませんよね。団らんというのは、例えば、結婚式とか家族旅行に行った時の写真がちょっと置いてあったり、思い出のある品々が飾ってあるとか、自分が選択したものに囲まれていて、そういうものも全部含めて団らんなのです。私にとってもそうだけど、皆さんが家をつくることの最終的な目的は団らんをどうつくるかじゃないかと思うんです。

——思い出と自分が選んできたものが団らんの一部とは、すごく素敵です。

佐川:うん、だって、誰も立派なトイレをつくるために家を建てるわけじゃないでしょう(笑)。

——あははは(笑)。

佐川:団らんは、一番居心地のいい空間にあるべきですから、引き算でそうやって考えてあげるんです。だけど、よく陥りがちなのが、2階にもトイレがほしい、シャワーもほしいと、どちらかというとプラスしていくデザインにしてしまって、自分たちの生活に合ったスタイルが見えてこないということ。家が着膨れを起こしちゃうイメージですね。

——なるほど。引き算の考え方をするとリビングの場所が決まりますね。では、その先はどのように考えればいいですか?

佐川:家族の集まるところがリビングとなりましたよね。そこが団らんの場ですよ、と。その団らんを中心として、玄関はどうあるべきか、寝室はどうあるべきか、トイレはどうあるべきか……と、団らんを軸に置いて、そこから各部屋を考えてあげるといいと思います。

——団らん=リビングが、家づくりの中心なんですね!

佐川:ええ。内側から考える、とも言えますね。車を置くから玄関はこっちから入ってというように、外回りばかりから考えてしまうと、なかなか内部空間と外部空間がつながっていかないものです。家の中で過ごすわけですから、軸がブレないようにして内と外のバランスを考えることです。

——軸がブレないこと……なんだか家づくりの大切なことは、人にも言える気がしてきました。あの、例えば、敷地面積から考えて3階建ての家になりそうだという場合、リビング以外の部屋はどうすればいいんでしょう。

佐川:いろんなパターンを考えてみます。1階をリビングにして、3階を寝室にすると、寝室からみんなが集まる場所まで2階分降りてこなくちゃならない。では2階にリビングを持っていけば、下にいる人と上にいる人の歩く距離が少なくとも半分になる、とか。

——2階の方が良さそうですね!

佐川:でも待てよ、日当たりのことを考えると、2階でも悪くないけど3階の方がもっといいんじゃない?という話になる。じゃあ、リビングは3階だ。1階から3階に上がるのは少し大変だけど、団らんの場所にいる時間が一番多いんだから、一番日当たりが良くて気持ちのいい場所を優先するのがいいね、と。

——おっと、3階に決定となりました(笑)。

佐川:ははは(笑)。まぁ、3階まで上がるのが将来きつくなりそうだということなら、あとあと1階から3階までホームエレベーターを設置することを考えた設計にするというアイデアが出てくるかもしれない。そうすると設計の段階で、各階の同じ位置に畳2枚分の広さ(1800mm×1800mm)ほどの納戸のスペースを取っておくんです。将来的に納戸部分の床を撤去すれば、ホームエレベーターを設置することができるというわけです。

——すごい。リフォームのことを考えた設計ですね。

佐川:そうですね。そこに梁が通っていると切ったら大変なことになってしまうので、なるべく梁を通さずに空洞をつくっておいて、のちにつなぎやすいようにしておくんです。だから30年、40年後の老後のことを考えると安心でしょう? 「いつか足腰が弱っても、少しのリフォームでエレベーターがつけられるぞ」というのが二人の頭の片隅にあると。

——そうですよね。

佐川:リビングやダイニングはリラックスする場だから、広ければ広いほど開放感を感じます。10畳しかリビングに取れないけれどやっぱり狭いとなれば、天井の高さを10センチ上げてみるとか、ちょっとした工夫はできますね。また、3階にリビングを設けると、屋根の形を利用した空間にすることもできます。

屋根の形を活かした天井の例(設計:佐川旭建築研究所)

そうすると、高さが3.5メートルくらいに。普通は床から天井までの高さは2.4メートルほどですから、1メートル以上高い開放的なリビングになることもメリットのひとつになりますね。

 

寝室は東側に、子ども部屋は北側に。

——寝室の間取りについて教えてください。

佐川:寝室は、できれば東向きに考えるといいですね。太陽の光は東から入ってきますので。やっぱり人間には体内時計というものがあって、朝の光を受けることで目を覚ますんですね。だから、朝の光が入ると快適だというのは、生理学的にも言われるところですよね。

——たとえ狭いとしても、寝室は東の方角にあるといいのですね。

佐川:先ほど言った平米数を目安にすると、寝室は6畳になることが多いですね。理想的には8畳ほしいところですけど、なかなか難しいかもしれません。でも、6畳でも十分。大丈夫だと思います。例えば西側にすると、夏はものすごく暑い部屋になるんですね。そこにバルコニーをつけたりすると、掃き出し窓(窓の最下部が床に接している窓のこと)となり大きな窓になるので、部屋はさらに暑くてたまらないということにもなりますよ。

——なるほど。方角のことでいうと、北側は一番日当たりが悪くて、使い勝手も悪いイメージがあります。

佐川:北側にはね、子ども部屋をもってくるといいですよ。

——えっ。子ども部屋には日をたくさん取り込んであげた方がいいと思っていました。

佐川:北側の光というのは、非常に落ち着いた、安定した光なんですよね。だから精神面にもとてもいいんです。

——そうなんですか!

佐川:ですから、明治時代の作家がどこで執筆していたかと調べると、だいたい北側なんですよね。あまり南というのはない。南側というのは強い光と弱い光が多いので、目も疲れるし、書くのにも適していないんですよね。

——へぇぇ、全然知りませんでした。

佐川:もう一つは、子どもを中心に考えて家をつくりがちですが、少し大きくなってくると、朝起きて学校に行って、部屋にいることもあまりないですよね。小学校から高校または大学までずっとそういう生活が続いて、気づけば自立して家を出て行くという年齢になっているものですよ(笑)。

——たしかにそうですよね。

佐川:今は寒いといっても、昔ほど隙間風が入るわけではないですし。間取りというのは少し不便な方が、ある意味ちょっとした会話や工夫も生まれるのですよ。「不便益」といって、多少不便にした方がいい場合もあるんです。例えば2階にお風呂とトイレをつけて、1階か3階にもお風呂をつけたとします。すると、2階に子ども部屋があったらほとんど顔を合わせることがなくなります。一つしかないと、必ず上下階に移動します。その際お母さんあるいはお父さんはちょっとした気配をそこで感じるとか、子どもの表情を読み取れることがある。仮にすれ違えば、「今日は何やってたの?」とか、何気ない会話も生まれますね。

——少しの不便から何気ない会話が生まれるなんて、目からウロコです。でもその家族の風景、すごく想像ができます。

佐川:ええ、不便さの良さもあると思うんです。

——最後に、少し細かい質問なのですが、コンセントの数がもっとあったらいいなぁと思うことがあって。家を建てる時には多めに設置しておくことで解決できますか?

佐川:コンセントの基準としてよく言われるのが、坪数と同じくらいの数が必要ということ。35坪の家なら35個ということ。でもいろんなことを想定して多めにつけておくのはいいことだと思います。

——自分の家のコンセントを数えてみると、たしかに坪数と同じです!

佐川:でも、人間のライフサイクルはどうしても1年ごとに変わっていくんですよね。例えば子どもが1人から2人になって子ども机を二つ置くようになったとか、熱帯魚を飼うことになったとか、ちょっと足腰が悪くなってしまって階段に自動で上り下りできる機械をつけたいとか。そうやって生活が変わっていくと、やはり電気が必要になってくるんですよね。

——ここにあると便利だよ、という場所はありますか?

佐川:うん、一つ見落としがちなのは、キッチンのカウンターのコンセント。水回りなのでクルッと回して差し込む形状のアース付コンセントがあると、コーヒー豆を挽いたり、ブレンダーを使ったりするのに便利です。おすすめですね。でも、コンセントは後からでも対応ができるので、心配することはありませんよ。

——プランニングに関して「こうした方がいい」と思い込んでいたことがたくさんありました。佐川さんのお話を聞いて、もっと家族と話しながら家づくりを楽しんでみようと思います。今日はありがとうございました!

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