住宅性能表示制度【用語解説】
ポイント
- 住宅取得の検討をしやすくする制度
- 10の基準がある
- 義務ではなく各項目について等級を選択するもの
解説
住宅性能表示制度は、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度です。住宅を取得する人にとって比較検討しやすくする目的で創設されたもので、基準は大きく10項目が設けられ、それぞれにさらに細かい項目があり、等級や数値が示されています。
10項目は以下の通りです。
- 構造の安定(耐震性能など)
- 火災時の安全性
- 劣化の軽減
- 維持、管理、更新への配慮
- 温熱環境(断熱性能と省エネルギー性)
- 空気環境
- 光と視覚に関する環境
- 音環境
- 高齢者への配慮
- 防犯への配慮
住宅性能表示制度は、ハウスメーカーや工務店、ビルダーなどの住宅業者と、住宅取得をする皆さんが利用するかどうかを選択する制度です。各項目についてどの等級を希望するかは皆さんの任意です。
これは、住まいというものが地域やニーズによって違いを持つからです。例えば、「構造の安定」に関する項目で最高等級を取ることが、敷地などの条件により難しいケースがあります。最高等級に対応するために壁が多い建物になると住みづらくなってしまいます。
誰でもいずれは高齢者になるものですが、そのための対策の等級を上げると、間取りに余裕がなくなり、余裕を持たせようとすると建物の面積が増え、予算オーバーになってしまうケースもあり得ます。
ですので、皆さんにとって必要な性能は何なのかを吟味し、等級を決めることが求められます。将来、皆さんのライフスタイルがどのように変化していくのか、などについて住宅事業者と共にしっかりと検討し、等級を決めましょう。
以上は注文住宅のケースですが、分譲住宅についても住宅性能表示制度を利用しているものがあります。仮に同じような価格、間取り、デザインの物件があるケースでは、制度が利用されているものなら、一定の信頼性があると認識できそうです。
また、住まいがストック(中古)住宅として売買される際、住宅性能表示制度を活用していれば有利に働きます。例えば、買い手が建物の劣化の具合など状況を把握しやすく、安心して購入できるからです。
空き家になると資産上の問題を引き起こすことになりますが、買い手が付くということは価値があることを表します。つまり、皆さんが取得する住宅が、手放した後も人生に有利な貢献をしてくれることになるわけです。
なお、性能の評価は国の登録を受けた住宅性能評価機関が行います。設計段階と建設工事・完成段階の2種類のチェックがあり、一般的に4回の検査が行われ、要求される性能通りの設計がなされ、その設計に合わせた工事が進められているかどうかチェックされます。
仮に建設住宅性能評価書が交付され、要求される性能を満たさない住宅が引き渡された場合については、指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請することができます。
裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関で、評価書の内容だけでなく請負契約・売買契約に関する当事者間の全ての紛争の処理を扱い、紛争処理の手数料は1件あたり1万円です。
ところで、住宅性能表示制度は2022年4月1日に改正されました。内容は温熱環境の項目における断熱等性能等級5と、一次エネルギー消費量等級6の新設です。従来の最高等級は断熱等性能は4、一次エネルギー消費量は5であり、新設により断熱性、省エネ性が高い等級ができたわけです。また、同年10月には断熱等性能等級の6と7が新設されます。