2022.06.21
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住宅事業者の空き家問題対策と「資産価値」対策について

今、住宅を巡る重要な問題の1つに空き家問題があります。このことは今後、住まいを取得する人たちにとっても無縁ではありません。

取得した住宅が将来、空き家になることが考えられ、それは皆さんの資産価値の形成・維持において不利になるからです。そこでこの視点から、どのような住宅取得のかたちを目指すべきなのかを解説。さらに住宅事業者がどのような取り組みをしているのかご紹介します。
 

空き家が良くない理由とは

住宅の世界は長く供給量が重視されてきました。その結果として深刻化してきたのが空き家問題です。「これではまずい」ということで、国はもちろん、住宅事業者の中にも対策を行う事例が少しずつ見られるようになりました。空き家問題は、住まいの資産価値やストック(中古)住宅の流通性と強い関連性があり、これから住宅を取得する人たちにも無縁なことではありません。この記事では、そうした点も含め解説します。
 

そもそも、なぜ空き家になることが良くないことなのでしょうか。それには以下のような理由があります。
 

  • 景観が悪化する
  • 防災上のリスクが高まる(地震による倒壊により周辺住民の避難が難しくなるなど)
  • 犯罪の温床になる
  • 地域の活力が失われる
  • 周辺の不動産価値が低下する など
     
熊本地震当時の様子。建物が壊れたほか生け垣も崩れ、避難が難しい状況となっていた
熊本地震当時の様子。建物が壊れたほか生け垣も崩れ、避難が難しい状況となっていた

では、空き家はどのくらいあるのでしょうか。総務庁の発表によると、2018年10月1日時点で日本にある住宅の総数が6242万戸で、空き家の数は846万戸。空き家の割合(空家率)は13.6%と、2015年時点のそれより0.1ポイント上昇し過去最高となっていました。
 

国では様々な施策を行っていますが、代表的なのが2014年成立の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家等対策特別措置法)です。この法律では、空き家を発生させる人や事業者に対して罰則を設けるなどの強制力を持たせているのが特徴です。
 

このような国の動きに伴い、ハウスメーカーなどの住宅事業者、不動産事業者も取り組みを始めています。その中で最も分かりやすいのがリフォーム・リノベーション事業に関する取り組みです。
 

以前に比べずいぶん体制が充実してきました。耐震や断熱、間取りと言った「質」を根本的に改善する大規模な改修を行うことで、これまで築後20~30年だった住宅の寿命を、さらに10年、20年と延長しようというわけです。
 

ストック住宅流通の未整備も課題

さて、ストック(中古)住宅の分野はこれまで流通システムがしっかりと整備されておらず、それも空き家を生み出す根本的な原因となっていました。この状況を改善する取り組みも一部で始まっています。

代表的なのが「スムストック」です。以下のハウスメーカー10社が一般社団法人・優良ストック住宅推進協議会を立ち上げ、共通の基準を満たすものとして認定するストック住宅のことを言います。

<スムストック加盟ハウスメーカー>

  • 住友林業
  • セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)
  • 積水ハウス
  • 大和ハウス工業
  • トヨタホーム
  • パナソニックホームズ
  • ヘーベルハウス(旭化成ホームズ)
  • ミサワホーム
  • 三井ホーム
  • ヤマダホームズ
     

共通の基準とは、各社のストック住宅のうち、住宅履歴データベースを保有し、それぞれのメンテナンスプログラムの対象であり、計画通りに点検と修繕を行っていること、新耐震基準レベルの耐震性能があるといった基準を満たすこと。
 

住宅展示場で行われたスムストックに関するイベントを告知する幟(のぼり)
住宅展示場で行われたスムストックに関するイベントを告知する幟(のぼり)


各社傘下の不動産会社が仲介などを担当すること、購入する人にとっても耐震性不足といった不具合の有無を確認しやすいことなどにより、オーナー(売却者)にとっての不安解消を図っています。

一般的な住宅の場合、築後20年程度で建物の価値はゼロと査定されますが、スムストックの場合は数百万円となるといいます。つまり、従来の流通市場より有利な売却価格となるわけです。
 

なお、優良ストック住宅推進協議会は、国土交通省がストック住宅の流通を促進する目的で設けた「安心R住宅」の第1号登録事業者団体となっています。

これらのハウスメーカーの中には、「買取再販制度」を行っている企業もあります。スムストックの共通基準を満たすストック住宅を供給した各社が買い取り、今の暮らしに合わせた間取り、耐震・断熱強化といったリフォームを施した上で、新たなユーザーに販売するというものです。
 

問題解消には地道な積み重ねが必要

スムストックのシステムや買取再販制度は、これから供給される住宅にも適用(一部地域を除く)されます。このことが意味するのは、「仮に手放す(住み替える)ことになっても、皆さんの面倒を見ますよ」ということです。
 

それにより、空き家になるリスクを減らせ、それにより皆さんはもちろん、住宅がある地域や自治体に一定の恩恵をもたらすことができるわけで、これは前出のハウスメーカー10社が提供する、それ以外の住宅事業者にはない価値の1つと言えます。
 

ところで、スムストックの仕組みは、皆さんの住まいが空き家になるリスクを減らし、資産価値を維持する先進的な手法なのですが、だからといって劇的なカンフル剤になり得ているわけではありません。

運用が始まって既に10年以上が経過していますが、各社のストック住宅の年間成約件数は少なく、ましてや新築住宅供給件数とは比べるべくもありません。ストック住宅の流通を活性化させるのはそれほど困難なのです。
 

とは言え、手をこまねいてはいられません。社会全体が「持続可能性」を強く模索する時代となっており、それを実現するためには住宅1棟1棟が次々に新たなユーザーに引き継がれ、これまで以上に長く住み続けられるようにならなくてはなりません。
 

ちなみに、大手10社以外のハウスメーカー、地域の工務店やビルダーなどを依頼先として選ぶ際には、「長期優良住宅」の認定を取得することが最低限求められるでしょう。これでしたら、ストック住宅としてある程度の流通のしやすさを持つ建物仕様となっています。
 

空き家問題の解消には、長期優良住宅をはじめとする質が高く、メンテナンスやリフォームの履歴が残ったストック住宅を地道に増やしていくしかありません。そして、そのことを考慮した住宅取得の検討を進めることで、皆さんは長く満足が続く住まいの獲得につながるものと考えられます。

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