2022.06.16
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知っておきたい住宅内に潜む「危険」

日本では、住宅内における事故によって多くの人が亡くなっています。その数は、交通事故によって亡くなった人より圧倒的に多いのが実情です。そこで、この記事では住宅内に潜む危険について紹介します。安心・安全な住まいづくりのお役に立てればと考えます。

 

高齢者に多いヒートショックによる死亡事故

厚生労働省の「人口動態調査」によると、2019年に「住宅(家庭)における主な不慮の事故」で亡くなった人は1万3800人だったとされています。このうち、以下が主な死因となっています。
 

  • 「溺死及び溺水」(5673人)
  • 「窒息」(3187人)
  • 「転倒・転落・墜落」(2394人)

このうち、「溺死及び溺水」がヒートショックと強く関係していると言われています。ヒートショックとは、暖かな空間から寒い空間に移動した際、急激な温度変化により血圧が乱高下し、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの症状になることを言います。
 

断熱性の低い住宅の場合、冬期には脱衣所が氷点下近くになることがありますが、その室温とお風呂のお湯との温度差は40℃くらいになることがあり、この大きな温度差がヒートショックを招きます。
 

25年ほど前に建てられた住宅の浴室の様子。この浴槽は手すりがあるなど比較的安全に配慮が行われている


その結果、身体の自由がきかなくなったお年寄りが浴槽内で溺死するというのが発生メカニズムの1つです。なお、溺死は幼い子どもにも起こっていること。カギ付き浴室ドアや手すり付きの浴槽、滑りにくい床のユニットバスなどでリスクを減らすことができます。
 

また、「転倒」についてもこのヒートショックが影響している可能性もあります。エアコンやヒーターで暖められたリビングから、寒い廊下やトイレに移動するなどした際にも発症例が見られるからです。
 

ヒートショックは、住宅全体が暖かく、かつ部屋の間の温度差を少なくすることで発症リスクを抑えることができるとされ、特に近年は24時間全館空調システムを導入することが効果的であると、医療関係者なども推奨するようになっています。
 

乳幼児の事故も多発

「窒息」は、お年寄りが餅などをのどに詰まらせるケースのほかに、オモチャなどを口に入れてしまう乳幼児にも起こること。これについては、間取りや収納を工夫することで防止することができます。
 

間取りについては、この20年ほどで対面キッチンスタイルによるLDKの事例が大変増えてきました。これは家事をしている親がリビング・ダイニングにいる家族の様子を確認しやすくするためです。
 

リビングはモノが散らかりやすい場所ですが、さっと収納できるようにしておくと誤飲を避けられる可能性が高まります。また、LDKに隣接して乳幼児の居場所となる畳ルームを設けておき、そこを使わない時には引き戸を閉めておくと安全性が高まります。
 

対面型キッチンを採用した間取りの事例。奥に畳スペースがある。画像では見えないが右にキッチンがあり、手前にリビングがある


「転倒・転落・墜落」のうち、転倒はお年寄りが段差でつまづき頭を打つといったケースが代表例です。古い住宅には、部屋間に段差があることがほとんど。バリアフリーにすることでリスクを低減することができます。
 

転落は階段から転げ落ちることが代表例で、これは階段の傾斜が急、踏み板が狭い、手すりがないなどといったことが要因です。転倒と転落はヒートショックを発症したお年寄りに起こるケースもあります。

墜落は子どもに多いことで、ベランダから誤って落ちることにより起こるのが一般的。ベランダのフェンスを上りにくい高さと形状のモノにすること(そうした配慮がある建物を選ぶこと)が予防策となります。
 

上記から、住宅内で発生している事故の犠牲者の多くがお年寄りと乳幼児であることが分かりますが、例えば階段からの転倒は誰にでも危険性があり、40~50代でも事故が起こっているので、安全への配慮が必要です。

 

交通事故の4倍超、コロナ感染死と同等

さて、2019年の交通事故による死亡者数は3215人でした。これは冒頭の住宅内の死亡事故者数(1万3800人)と比べると、4分の1です。なお、交通事故の死亡者数は2020年に2839人とさらに減少し、記録を取り始めて以来の過去最低となっています。
 

2020年の交通事故による死亡者数の減少は、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛が強く影響していると考えられます。ただ、自粛効果が減った2021年も2636人となり、最少記録をさらに更新しています。
 

なお、2020年に日本国内で新型コロナ感染により死亡した人の数は、交通事故による死者数より多い3466人。2022年1月17日時点の死亡者数1万8436人からこの死亡者数を引くと1万4970人となります。
 

コロナ禍以降、国民の多くが感染対策に積極的に取り組んだ。画像は、東京千代田区に設置されていたワクチンの大規模接種会場の様子


私たちはこの2年間、コロナ感染に強い危機感を感じてきました。年が違うので単純に比較できないことは承知していますが、その死亡者数と住宅内の死亡者数がほぼ同等レベルであることは、住まいに潜む危険の多さをよく表していると言えます。
 

ところで、大切なのは家庭内で起こる事故を他人事と考えないこと。この文章を読んでくださっている方の多くは、まだ若く健康的な暮らしをしている人がほとんどだと思われますが、人間は年を取ると2階に上ることさえ苦労するようになります。
 

ましてや、小さなお子さんがいらっしゃる家庭では、「ひやり」「はっと」した経験がいくどかあると思われます。ヒヤリハットが重大な事故につながらないようにするため、住宅取得の段階にしっかりと住まいの安全・安心について検討してみてください。

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